案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

開演前の撮影禁止の理由について考える

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ある日

「開場中の舞台に誰もいない状態で場内の写真を撮っていたら、係員に注意されたが、理由が分からずモヤモヤしている」

という内容の投稿を見つけました。

撮影の有無については、会場や主催者によってルールがいろいろなので、分かりずらいですよね。

本日は、コンサートホールでの「写真撮影の禁止の理由について」考えました。


■一般的に日本のコンサートホールでは、
・「著作権」や「肖像権」の侵害になる
・演出効果の妨げになる
ことなどを理由に、「開演中」の撮影を禁止している場合がほとんどです。

クラシックコンサートは、開演すると場内が暗くなるだけでなく、演奏はスピーカーを用いず生の音で伝わってきますので、スマートフォンの画面の光やシャッター音、カメラを掲げる動作、それに伴う音はとても目立ちます。

クラシックのコンサートでの撮影禁止の理由は、「著作権」や「肖像権」の他に、演奏や演出以外の「音」や「光」が、鑑賞の妨げになるのを防ぐ意味合いが強いです。


■では、開場中の舞台に誰もいない状態の場内を撮影するのは、なぜダメなのか?

・演劇などのように開場中から舞台上にセットが置かれている場合は、著作権の関係でNGです。そこに人がいるかどうかは関係なく、創作物を撮ることがNGです。

・ほかにも、建物やホールの著作権の関係で撮影が禁止されているホールもごくまれにあります。

・それから、学校の施設として学校が所有しているホールで、学生をストーカーなどの被害から守るために終日撮影を禁止していることもあります。(ホールを撮影するふりをして学生を撮影し、過去に事件があったなど)


では、クラシックのコンサートで、オーケストラのセットやピアノが置かれているだけの場合、あるいは、無伴奏のソロの演奏会やオルガンコンサートのように舞台上に何も置かれていない状態のホールを撮影して注意をされる理由は何でしょうか?

私も分からなかったので、実際に開場中の場内の写真撮影を禁止しているホールの担当者に理由を聞いてみました。

その回答は・・・

「開場中に撮影をしている人を見て、開演中も撮影してよいと周りの人が勘違いするのを防止するため」

コンサートに慣れていない人が、開場中に写真撮影をしている人を見て、このホールは開演中も写真撮影OKなんだと勘違いして、開演中も撮影してしまうのを防ぐためというのが理由なのだそう。

みなさんは納得できますか?

たぶん、投稿した人が注意を受けた理由もこれではないかと。

実は、私はこの回答にあまり納得していません。

なぜなら、ほかのホールでは開場中は撮影OKで、開演中はNGということを守れている人が多く、開演中も写真撮影してしまう人は、確信犯(いけないと分かっていて人目を盗んでやっている)だったり、単に知らなかったり、出演者の知り合いや家族だからいいだろうと思っていたという人が多く、「開場中に撮影している人がいたのになぜダメなんだ」と言われたことは、ないからです。(あくまで私の場合)

■私の回答

私は、もっと別の理由を考えています。

実は、写真撮影の基準は複雑で、開場中の撮影をOKしている会場でも、次の場合は撮影をお断りしています。

それは、「演奏者が舞台上でチューニングなどをしているとき」です。

 

クラシック専門のホールは、客席と舞台が一体となっていて、緞帳がありません。


また、緞帳のあるホールでもクラシックのコンサート(オーケストラやリサイタルなど)の場合は、多くの場合緞帳を使用しません。

つまり、舞台の上は開場中ずっと見えている状態です。

そのため、ハープやコントラバスなど大きな楽器の演奏者が、チューニングを行うために舞台に現れると、必然的に客席から見えます。その場合は、演奏者の肖像権を守るために「今は演奏者が舞台上にいらっしゃるので、写真撮影をご遠慮ください」とお声がけして、やめてもらっています。(私の勤務しているホールの場合)

私は、これがすごく難しいなと思っています。
なぜかというと、そんなことは多くの場合(少なくとも私が勤務しているホールでは)会場のどこにも書かれていないからです。

演奏者は、決まった時間に舞台上に現れるわけではなく、ふいに現れます。場内にたくさんのお客様がいらした場合、その一人一人に「今は撮影できません」とお声がけするのは、現実的ではないなーと内心思っています。

結局、努力義務みたいなもので、全員にお声がけすることはできず、どこかで誰かは撮影しています。それが問題になるならいっそのこと、終日撮影禁止の方がすっきりしていると感じますし、係員の負担も少なくなります。これが私の回答です。

ちなみに、ピアノの調律師さんは撮影OKです。それから、案内係の私たちもバシバシ撮られています。当然ながら調律師さんにも私たち案内係にも肖像権はあります。しかし、撮影禁止の対象にはなりません。フリー素材と化している我ら…。

理由は不明ですが、スタッフの写真で過去にトラブルになった例がないからだと思います。そして、調律師さんもスタッフと同じ扱いなのかもと個人的には考えています。


■ホールで怖いのは連鎖してしまうこと。


何百人何千人が集まるホールで撮影をしている人を含め、開演してからすべての禁止行為を注意しに行くことは案内係の人員の関係で困難です。

多くの人が集まった時に、一人の人がやったから自分も便乗してやろうと、次々に真似をする人が続出し、収拾がつかなくなることがあります。

私は、マナーもモラルも何もなくなって、無秩序になったコンサートを何度も経験したことがあります。

もし、この方法を採用したことで、勘違いで撮影してしまう人が劇的に減り、そのような事態を未然に防ぐことにつながっているのなら、そのホールにおいてこの方法がベストなのかもしれません。

ただ、それならそうと「開場中も写真撮影NG」と分かるように掲示する方が得策だと思います。そうすれば、この質問を投稿した方のように不要な注意を受けてモヤモヤしなくて済むのに…。

撮影禁止の理由再び↓

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