本日は、案内係がお客様の「マナーや教養について」声をかけることの難しさや葛藤についてお話します。
私は、お客様や出演者、主催者が安心して、何も気にすることなく演奏や自分の仕事に集中できるようにさりげなくお手伝いすることが、案内係の仕事だと考えています。
さらに言えばコンサートを鑑賞して帰った後に、楽しさと感動だけが心に残り「案内係なんていたっけ?」と案内係の存在が思い出せないほど絶妙なタイミングでお客様をサポートできたら究極だなと思っています。(※あくまでも個人の意見です。)
王室や貴族の館のように、実はたくさんのスタッフがいるのに、掃除、洗濯、料理が自動で行われでいると錯覚するほどスムーズに仕事が行われている感じ。
私の周りには、コンサートホールに溶け込むように素敵で実力のある案内係の先輩、同期、後輩がたくさんいます。
ですので、多くの方々は案内係がいるということは頭で分かっていても、ホールを出たら思い出すこともないという経験をされていることと思います。(…たぶん)
「見えるようで見えない、けれど、いないようでいる。」
そんな案内係(レセプショニスト)の存在を強く感じるときとはどんな時でしょうか?
多くの場合、困ったことやご意見、要望があるとき。。。ですよね。。
案内係をしているとたくさんの意見や要望をいただきます。
ネットで記事を書いているクラシックファンの方の中にも、「迷惑行為をしている人がいたら案内係に言って注意してもらったほうがよい」と書いている方もいらっしゃいます。
もちろん、コンサートホールで快適に過ごしていただき、鑑賞に集中できるようにサポートすることが私達の役割ですので、それらを妨げる行為に対しては、何らかのアクションを起こす必要があります。
そうでなければ、何のためにいるのか分かりません。
私たちは、ホールの隅にぼーっと立っているわけではなく、それとは気づかれないようにさまざまな問題を処理しています。
そして、迷惑行為の中でも、音や光を発する、視界を遮る、許可なく撮影をしているなどルールに反する行為に対して、おくすることなく適切にお声掛けをすることは案内係必須の技術でもあります。
しかし、批判を承知で申し上げましょう。
案内係(レセプショニスト)は注意係ではありません。
そして、いびきやフライング拍手、靴を脱いでいて足のにおいがきついなど、どちらかというとマナーや教養に関わる行為に対して声をかけるのは難しいと感じています。
お金を払ってコンサートに来たのに、一部の人の行為により楽しめなかったというのは私達としても残念なことです。私達は、多くの方々に公演を楽しんでもらいたいと思っているからです。
コンサートに足を運び、楽しい気持ちで帰るということは、蛇口をひねったら水が出る、ことと同じくらい大切なことなのです。(※あくまでも個人の意見です。)
ですが、マナーや教養については、その人の価値観や育ってきた環境、生き方が関わってくるので声をかけるのは簡単ではありません。仮に私が学校の先生で、生徒に対して注意するなら教育ととらえることもできますが、係員は先生ではありません。
コンサートホールに多くの人が足を運ぶのは、鑑賞を楽しみたいから。たとえ、それが自分のマナー違反が招いたことであったとしても、係員からマナーや教養も含め注意を受けてしまったら、その人は残念な気持ちになるでしょう。
これが、案内係(レセプショニスト)の立場の難しいところだなと思います。注意をして、やめてもらえればOKなのではなく、なおかつ「いやな気持ちにさせない」技術が常に求められています。
直接的にバシッと伝えるのは、どうしてもやめていただけないときの最後の最後の(大切なので2回言いました)手段なのです。
まとまりのない文章になってしまいましたが、案内係の難しさについての私が思っていることをお話しました。