◼️案内係質問あるある
「コンサートホールで案内係をしています」と言うと、よく言われる鉄板のフレーズがあります。それは、
「案内係って無料で公演が観られるんでしょ?」「いいなー」
というもの。
今までに、何度も聞いたフレーズですが、この質問には大きな誤解があります。
このようなことを言う人の多くは、コンサートに行った際、場内で業務を行っている案内係を見て「仕事中に公演が楽しめる」と思い込んでいるのかもしれません。
しかし、実際の案内係の仕事は「鑑賞」ではなく、お客様が安心して公演を楽しめるようにサポートすることです。業務内容は場内監視や来場者対応、時には緊急時の対応まで多岐にわたり、公演を楽しめることの方が少ないです。
■公演中、場内のスタッフって何してるの?
場内にいるスタッフは、開演すると場内の隅に小さい椅子を持ってきて座り、あるいは立った状態で
主に以下のような業務を行っています:
- 遅れていらした方の案内
- 禁止されている写真撮影や録音をしている人がいないかのチェック
- 長時間の物音など、他のお客様の鑑賞を妨げる行為がないかの確認
- 途中で席を立った方の誘導、必要に応じて外部のスタッフに報告
- 舞台上でのトラブルや異常が起きた際の対応(例:小道具が客席に飛んでしまった、合唱団員が倒れたなど)
このように、場内での業務は安全管理や公演進行を見守るためのものであり、鑑賞するために場内にいるわけではありません。
客席や舞台の上で起きていることは、モニターやスピーカー、舞台袖ののぞき穴からだけだと分かりずらいので、場内のスタッフの目はとても大切です。
■場内業務と鑑賞は違うよ
冷静に考えれば分かると思いますが、私たちは、公演を「鑑賞」するために会場内に入るのではなく、お客様が安心して鑑賞に集中できるようにサポートするために場内に入っています。
つまり、何か問題が起きれば、すぐに対応しなければならないため、実際に公演をじっくり楽しめるかと言われると、そうでもないのです。
それから業務を行うポジションについて。場内看視の業務は限られた人数で行われます。その時のメンバーの組み合わせによって決まるので、自分が希望のポジションになれる保証はありません。
また、上級者になるほど場内業務は少なくなる傾向にあります。他のスタッフに指示を出したり、対応の必要な来場者に応じたりする必要があるからです。
さらに会場によっては、椅子に座らず40分ほど立ちっぱなしという場所もあります。少なくとも、楽章間などでお客様を立ち見でご案内した場合は、自分も立っていることになります。
■興味のある公演にだけ関われるのか?
また、ためしに、そのホールの1ヶ月のスケジュールを開いて確かめてみるといいでしょう。自分はこの全ての公演に興味があるかどうか。
当然ですが、自分が興味のある公演ばかりに入れるわけではありません。時には、自分にとって興味の薄い公演や、アマチュアの演奏会が続くこともあります。
自分の好きなアーティストや演目なのに、公演中、来場者の対応に追われ、いつ曲が始まったのか終わったのか分からないくらい、バタバタな時もあります。
時には不幸にも来場者の虫の居所が悪く、理不尽な罵詈雑言を浴びせられ、好きな公演がいやな思い出として、残ることも…。
また、他の会場での人手不足によって全く別の場所で働くことになり、その公演に関わることすら出来ないこともあります。
そして、仮に全てに興味があっても、一ヶ月間場内のポジションが一度も回ってこないこともあります。
また、その公演の責任者になった場合は、円滑に運営することに集中していて、演奏を聴くどころではありません。
なので、身内やご友人などに、公演を鑑賞する代わりにボランティアで準備や開場中の手伝いをしてもらっているのとは、違うということです。
案内係は「お手伝い」ではなく、「仕事」です。
■場内勤務の実情
場内看視の業務は、会社やホールによって異なりますが、ずっと場内にいられるわけではありません。多くの場合、前半と後半で担当が交代します(ごくたまに通しのこともあります)。
遅れてくる来場者が多かったり、場内での問題が多いと、その報告や対応に追われ、気づけば公演が終わっていた、ということもよくあります。
また、場内で写真撮影や録音が行われているのを見かけたら、どのタイミングで声をかけるべきか考えなければなりません。なぜなら、その場にいるのは自分であり、対処が求められるからです。
また、公演の妨げとなるような音を立てている人がいる場合も同じです。
とはいえ、時には自分の好きな公演で場内の業務を担当することができることもあります。実際、先日久しぶりに場内のポジションに就いた時は、非常に感慨深い気持ちになりました。
しかし、これは非常に稀なことです。
また、年末年始などクラシックのコンサートシーズンの時や企業の招待で行われるシークレットな演奏会などでは、クラシック音楽に不慣れなお客様が多く、演奏中に物音を立てたり、立ち歩く方もいます。
中には、スタッフの制止を無視して場内に強行突破してくる方もいるため、場内が無法地帯のように感じられることもあります。
このような公演では、演奏が素晴らしくても、鑑賞の環境は二の次となりがちで、場内でその状況を見守っていることが苦痛で仕方のない時もあります。(あくまで私の場合ですが)
さらに、テレビなどで広く知られている有名アーティストの公演も、客席が騒がしい傾向があります。そんな時も、同じように複雑な気持ちになることがあります。
◼️観たい公演はチケットを買おう
公演中は、さまざまな問題が起きます。もちろん、ごくまれに何事もないこともありますが。なので、仕事中に無料で公演が楽しめると思って、この仕事を選ぶと期待外れになるでしょう。
公演を楽しみたいのであれば、チケットを購入して観客として座席に座り、心から楽しむのが一番です。
もし、このお話を聞いてもやっぱり案内係は無料で公演が観れて、楽しみながら仕事が出来るばずだと思う方は、実際にこの仕事をやってみると良いと思います。ホールに電話を掛ければ採用情報を教えてくれるはずです。
本日は、案内係は、公演の運営を支えるために存在しており、鑑賞者とは異なる視点でホールにいるというお話でした。