なぜ、コンサートで撮影してはいけないの?このモヤモヤはどこから来るのだろう?撮影禁止の驚きの事実を伝えます。
日本では、多くの場合コンサートでの撮影を禁止しています。
その理由について、著作権や肖像権、商品の販売への影響などが理由にあるのではないかと考えて納得している人もいるでしょう。
ですが、中にはこのような投稿もあります。
「海外では撮影OKな公演が多い」「日本でもカーテンコール中は撮影OKのところも増えてきている」「せっかくだったら拡散してくれた方がいいのではないか」
私は、知恵袋などに質問を投稿している人は、撮影をすることのメリットを感じており、それを禁止するデメリットについて疑問を投げかけているように思いました。
撮影禁止の理由は、案内係をしている私であっても複合的で複雑なので、一言でいうのは難しいです。
なぜなら、撮影のみで考えれば犯罪ではありませんし、コロナ禍のマスク着用のようにそうしなければガイドラインに引っかかり、公演中止に追い込まれるというものでもないからです。
撮影禁止の議論の難しいところは、「20歳以下の飲酒は禁止」というように法律で定められたルールがあるわけではなく、撮影禁止にすることによって、主催者が何を実現したいのか
例えば、
・映像や音楽の流失を防ぐことでブランドを守りたい
・観客が撮影したものによって、過去に事件に発展したので、それを防ぎたい
・CDやDVDの売り上げが下がるのを避けたい
・撮影している人のマナーの悪さで、ほかのお客様が不快な気持ちになるのを防ぎたい
など、その都度違う、明確ではない基準に則って行動しなければならないからだと思います。
今回は、撮影禁止の理由について、著作権や肖像権、商標権、などの法律やガイドラインとは違う視点からお話します。
■クラシック音楽の場合
クラシック音楽の場合、著作権や肖像権の侵害になるというのは、もちろんなのですが、一番の理由は「鑑賞の妨げになる」からです。
クラシック音楽は、例外もありますが、基本的に「生の音を鑑賞する芸術」です。ですので、大音量のものもありますが、基本は静かです。なので、些細な音でも耳につきます。
そこで、カシャカシャ撮影をしていたり、ピカピカ画面を光らせていたら、すごく目立ちます。許可を得たカメラマンですら、調光室や舞台袖から撮影するようにホールから言われることもあります。
また、客席で撮影を行う際も無音・無光・無挙動で気配を消して、撮影を行う必要があります。撮影に必死になって、物音や挙動に関心が払えなくなっていたら、案内係は「カメラマンがバタバタしてうるさいんですけど」とチーフや主催者に相談に行きます。
クラシック音楽の公演において、舞台上のアーティストが発している音や光以外は、騒音や鑑賞の妨げとみなされるのです。
何をうるさいと感じるかは、人それぞれなので、クラシック音楽の撮影をするカメラマンは、カメラの技術のほかに、クラシックを鑑賞する人の感覚も必要だと思います。
■ほかはいいのに、ここはなぜダメなの?このモヤモヤはどこから来るのだろう?
撮影禁止の理由やルールの制定、実践の仕方は、多くの場合どのような公演にしたいのかという主催者の考えに基づいて行われます。
なので、「ほかではよいのになぜここではだめなのか?」と聞かれても「この公演にはこの公演のルールがあるから」としか言いようがりません。
案内係は主催者の実現したい公演をサポートするためにいます。ですので、主催者がこうしたいと依頼してきたらそれに従うしかありません。
それは、
・未就学児や特定のドレスコード以外の人を入場させないでほしい
・遅れてきた人を演奏中や楽章間に場内に入れないでほしい
といった要望についても同じです。
私たちにもいろいろな考えがあります。
しかし、その多種多様な考え方すべてにシフトすることは現実的ではありません。
それに、理由を知っても納得できるかどうかは別の問題で、最終的には、誰かに「こういうことはやめてほしい」と言われたときに、それでもやるかやらないかの違いではないかと。
不特定多数の集団で統率を取るには、どこかで線引きをして誰かの考え方に合わせる必要があります。何百人、何千人、時には何万人といる人、すべてが納得することは、ほぼ不可能なのですから、誰かの基準を貫くしかありません。その時の基準が、主催者であり、その時の担当者です。
その人が実現したい公演を作っていくのが、私たちの仕事であり、結局のところ撮影禁止の理由は、法律とは関係ないところにあるのかもしれません。
■まとめ
撮影禁止の理由は複数ありますが、その理由は必ずしも法律に基づいて行われているわけではなく、多くは「撮影禁止にすることで主催者がどのような公演にしたいのか」で決定されるということ。だからこそ、ルールは一律ではない。
ほかのホールや公演が良くても、主催者やホールが違えば、ルールも変わります。案内係はそれをサポートするためにいるので、納得できない場合は、主催者につなぎます。