案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合う、劇場の魅力を語ります。

コンサート 電子チケットって便利なの?係員の意見はこうだ!

■電子チケット

近年、多くの公演で導入が進められている「電子チケット」。手軽に購入でき、チケット購入者を管理しやすく、ペーパーレス化も実現できるなど、複数のメリットがあります。もう、時代は電子チケットだろ!という雰囲気すらある電子チケット。

しかし、劇場で聴衆を迎える私の視点から見ると、電子チケットにはメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、電子チケットの種類とそれぞれの特徴、そしてその利点と欠点についてお話しします。

■電子チケットの種類

電子チケットには大きく分けて2種類があります。

・スマートフォンを操作するタイプ
・QRコードを読み取るタイプ

スマートフォンを操作するタイプは、来場者が表示した入場画面を係員(または、本人)が操作or確認して入場します。

QRコードを読み取るタイプは、スマートフォンや印刷したQRコードを機械に読み込ませて入場します。

紙のチケットの時は、入場者数を一枚一枚手作業で数えていましたが、電子チケットは、チケットの半券を数えなくても入場者数が把握できるで便利です。

■デメリット

しかし、案内係としての視点から、電子チケットにはいくつかのデメリットがあります。

・来場者が操作に慣れていない

電子チケットは、紙のチケットと違い、入場画面を表示してもらう必要があります。電源が入らない、パスワードが分からない、購入履歴やメールを見つけられない場合など、紙のチケットよりも時間がかかることがあります。

・電波障害がある

劇場では、開演中の着信音を防ぐために妨害電波を発していることがあります。そのため、オンラインチケット表示のための電波が届かないことがあります。また、電波が届きにくい場所に入り口がある場合もあります。この場合、来場者には一度入口の外に出てもらい、電波を拾ってもらう必要があります。

・QRコードの読み取り機の性能が悪い

主催者側の問題として、読み取り機の性能が悪いとスムーズな入場が妨げられます。また、劇場のエントランスが暗い、あるいは逆に光が当たりすぎて画面が反射し、読み取りにくくなることもあります。

■席を追跡できない

案内係の重要な仕事には、遅れて入場したお客様を席に案内することがあります。紙のチケットの場合、切り取った半券に席番が書かれているため、その番号を頼りに最短のルートや注意事項を伝えたり、他のスタッフと連携して案内することができます。

しかし、電子チケットの場合、案内係の手元にチケットの半券が残らないため、席の追跡が難しくなります。また、チケットの読み込み作業を主催スタッフが行う場合、連携が取りづらく、案内がスムーズに行かないことがあります。

  ■駅の改札のように自動化する日は来るのか?

チケットもぎりを駅の改札機のように自動化する日は来るのでしょうか?一部のホールでは可能かもしれませんが、普及するには時間がかかるでしょう。コストの問題や小規模公演の現実を考えると、すぐにすべてのホールで自動化するのは難しいです。また、システム導入には機材やスタッフが必要となり、コストが増加します。

■劇場の案内係は消えゆくのか?

現代の技術をもってすれば、劇場案内の自動化は可能だと思います。しかし、なぜ現実にはまだ人が行っているのでしょうか?

一つは、多様なニーズに対応できないからです。劇場には様々な方が訪れます。案内係は一律に対応しているように見えて、実は個々に対応しています。

二つ目は、単純にお金がかかるからです。自動化にはそのシステムと機器が必要です。満席にすることができなくて赤字ギリギリの状況では、そんな設備を購入する資金がありません。

また、人は柔軟に対応できますが、機械は一度壊れるとその対応が難しいです。人員削減で経費をカットしつつ、依然と同じクオリティを求められるのは悲しい現実です。

劇場の案内係がいなくなる未来は考えにくいですが、効率化や自動化の流れが進む中で、私たちの役割も変わっていくかもしれません。しかし、劇場での温かい対応や柔軟なサービスは、人間ならではのものであり、それが求められ続ける限り、案内係の存在価値は失われないでしょう。