案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

「障害のある子はピュア」「感性が豊か」に対する違和感、障害×芸術性について考える

■「障害のある子はピュア」「感性が豊か」は何を意味しているのか?

障害のあるお子さんについて語られるとき、必ずと言っていいほど聞く言葉がある。

それは、障害のある子は「ピュア」「感性が豊か」というたぐいのもの。

私は、これを聞くといつも思う。障害のある子って、簡単に言うけれど「具体的にどんな子を指しているのか」と。

明らかに分かるレベルなのか?それとも通常学級に通っていて、ほとんど気づかれないほどの子も含まれるのか?生まれつきなのか、後天的なものも含まれるのか?

たぶん、この話をしている人の多くは、明確な答えなどなく、ただなんとなくざっくりと雰囲気で言っているのだと思う。

「障害」は、基準はあっても、はっきりとした線引きのない、グラデーションだからだ。

以前もある人が「私が関わったことのある、○○ちゃんは障害があって、でも、障害のある子って一般の子よりも感性が豊かでしょ。○○ちゃんは、○○がとても上手だった。」という話をしていた。

「障害」と聞いて、すぐこの手の話を引き合いに出す人たちに私は聞きたい。

その子は、「障害」があるから、感性が豊かで、何らかの活動、あるいは表現が豊かにできるのだろうか?


私の考えは違う。


その子は、「障害」があるから感性が豊かなのではなく、

「その子自身」に音楽的なセンスがあり、その他の特徴として障害もあるのだ。


同じことを言っているように思われるかもしれないが、この違いが分かるだろうか。


■障害のあるお子さんと向き合う

障害のあるお子さんと向き合うのは、時として簡単ではない。グレーゾーンのお子さんもそうだ。なのに、簡単に「ピュア」だとか「感性がある」とか言うのは、「自分には障害に対する理解があるのだ」という、アピールに思えてならない。

偶然うまく行った、たったひとつの事例が美しい思い出になっていて、他の子と関わっても同じようにできると思い込んでいはしないか。

もし、ほかの子と関わって、自分の思い描く障害のある子の反応と違っていたら、その子の良さが見いだせず、さじを投げるかもしれない。

障害のあるお子さんと関わことはできても、向き合うのは難しい。

障害に本当に向き合っていたら、簡単には「ピュア」だとか「感性があるとか」言えないと思う。少なくとも、私は言えない。


■「障害のある子全般に音楽的な感性がある」は本当か?


子供でも大人でも自分のもつ特性に気が付かず、生きづらさを抱えている人はたくさんいる。本当は、ほかの人よりもハンデを背負っていて、人一倍努力して生きているのに、努力不足だとか、バカだとか、アホだとか、やる気がないとか、感性がないとか、

心無い言葉を投げられた人はたくさんいると思う。


「障害のある子はピュアだ、芸術性が秀でている」と言っておきながら、まだまだ認知が進んでいない脳の特徴を持つ子(分かりづらい障害のある子)に、「お前には芸術性のかけらもない」と言い放つ人もいる。


たとえば、発達障害という診断を受けていないのに、感想を言葉にするのが極端に苦手な子がいて、音楽鑑賞をした後に、感想を求めても黙って何も言わなかったとする。

でもそれは、何も感じなかったのではなく、それを言葉にすることが著しく苦手な特性があり、ほかの表現方法ならうまくできたかもしれないし、ほかの場面で聞いたらもっと深い感想を述べるかもしれない。

そもそも、本当に魂を揺さぶられる演奏を聴いた後には、定型発達の人だって簡単に言葉は出てこない。だから、「言葉を失うほどの○○」という表現があるのだ。簡単に言葉にできるほどの演奏は、実はそれほどではないかもしれない。

それを「どうせあなたは、何も感じなかったんでしょ。こんなに素晴らしい演奏を聞いて何も思わないなんて、ダメね。あなたみたいな、なんの感性も芸術性もない人は、音楽なんかやめな」と言い続けた先に何が残るのだろう。

その子が、もし何らかの障害と診断されたら、その日を境に「ピュア」で「感性のある子」に変わるのだろうか?

あるいは、ヘルプマークを付けていたら、何も言わないことが芸術の表現だという解釈になるのだろうか。

それって、その子の音楽性云々と言う話ではなくて、「受け取る側の解釈の問題」なのでは?

一生その特徴を抱え、定型発達の人と同じようには生きられない将来に対する、せめてもの哀れみの気持ちが「ピュア」とか「芸術性」という、基準があるようでない言葉を選ばせるのだろうか?

あるいは、そう思い込むことで障害のある子に対する、関わりづらさを緩和しようとしているのか?


「障害」があるから芸術性がある。ならば、障害という診断のない子は何なのか。


分かりずらい障害や特徴によって生きづらさを抱える人もいるのに、「障害」がどういうものか深く考えずに、「障害のある子はピュア」だとか「感性があるとか」。それらの発言は、一見理解があるように見えて、障害を理解していないし、責任のない発言だなーと思うというお話でした。


 

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