案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

生誕110周年・佐藤忠良展【宮城県美術館】

■ついに、念願の宮城県美術館「佐藤忠良展」に行ってきました!

本当は、昨年開催予定だったのですが、地震の影響で延期になり、ようやく今年訪れることができました。

前の日に、東京でのコンサートの仕事を終えて、終演後作業を高速で進めて、新幹線に飛び乗りました。夜公演だったので、ぎりっぎり。最近は、コロナの規制変更され、感染防止のため禁止されていた、面会も復活。終演後のお客様の滞在時間が長くなってきているので、終わりの時間が読みづらくなってきました。

面会などが長引いたら、新幹線に乗り遅れる…。しかも、最終なのに。なにはともあれ、間に合いました。久しぶりの仙台で、ウキウキ。

■宮城県美術館

そして、本日、やっと美術館へ。上野も芸術的な街ですが、それと似た雰囲気を感じました。宮城県美術館は、1981(昭和56)年11月に開館した『開かれた美術館とはなんなのか』を問いかけて生まれた美術館です。

この日は、あいにく、くもり。
ですが、訪れた時は雨は降らずもってくれました。



何度も、画像で見た光景が目の前に!!
ついにたどり着きました。

やっぱり実際に訪れると、イメージが少し違います。建物の左側に進むと1990(平成2)年6月には、佐藤忠良記念館がオープンがあります。

何度も見た、ポスターが、正面入り口でお出迎え。この美術館の雰囲気にぴったりの静かで、趣のあるポスターです。


平日のため人は少なく、ほぼ貸し切りの状態です。上野は、人が多すぎるのかもしれませんね。作品よりのも人が多い。

なので、地方の美術館に行くと、作品とじっくり対話ができて、楽しいです。階段を上がった2階で「佐藤忠良展」が開催されています。

作品も素敵なのですが、美術館は、建物そのものが芸術的。
宮城県美術館の設計は、上野にある東京文化会館なども手掛けている、モダニズム建築の巨匠「前川國男」です。

佐藤忠良の作品は、滋賀にある佐川美術館にも観にいき、その時も佐川美術館の美しさに心打たれました。佐川美術館は、打ちっぱなしのシンプルでモダンな建物でしたが、こちらは歴史を感じる、渋くて温かみと味のあるたたずまいです。

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天井のアーチがいいよねー。壁の壁材がいいよねー。床のタイルがいいよねー。石のパブリックアートがいいよねー。吹き抜けの空間がいいよねー。オレンジ色の照明がいいよねー。こんな場所が日本にあるなんて、なんて素敵な国なんだ。

建物の外では外見を眺め、中ではエントランスを眺め、作品展に入る前に、建物を眺めるだけでかなりの時間を費やしてしまいました。


この空間にいるだけで、仙台までやってきたかいがあったと思いました。もう満足です。みんなありがとう!シクシク…。

■やーぼ涙のわけ。(泣いていないけど)

実は、この宮城県美術館、2019年の秋に移転の危機を迎えます。取り壊されそうになったのです。

開館して、40年近くたつことから、県教委は「老朽化が進み、施設の全面的更新が不可欠」として、2018年3月に「県美術館リニューアル基本方針」で、増改築をするという案が提出されました。

しかし、19年11月、県は一転して、美術館を県民会館(青葉区)などと一緒に仙台医療センター跡地(宮城野区)に集約移転させる方針を明らかにしたました。これは、リニューアルには、膨大な費用が掛かるという理由からでした。それなら、新しく作ったほうがいいという考えがあったよう。

そのまま、この案が進んでいたら、この素晴らしい建物も、多くの建物のように消えていたでしょう。

しかし、県民不在のまま決定されていくことに危機感を抱いた市民が声を上げ、撤回を求めて動き始めます。そして、ついに移転を断念。現在地で存続することが決定され、2023年6月からリニューアル工事に入ることになりました。

私は、何でもかんでも古いものを残せばよいとは思っていません。どんなに価値のあるモノでも壊さなければならないことはあると思います。

しかし、私達市民がいったん立ち止まってそのものの価値について考える機会がどれだけあるでしょうか。なんとなく行政に流されて、価値のあるものをごみのように手放してしまっていることにすら気が付かないことは多いと思います。

私の住んでいる東京の街もそのようなことがたくさん起きていますし、今この瞬間にも新宿駅や外苑前などで進んでいます。

前川國男の設計した、神奈川県立音楽堂も取り壊しの危機を乗り越えて、リニューアルを終え、今も私達を迎えてくれます。しかし、まだ、ホールの設計がよく分かっていなかった頃の設計です。使いやすさやバリアフリーを考えれば、新しく立て直した方が合理的です。

しかし、そのような使いにくさをもってしても、神奈川県立音楽堂は残りました。

前川國男の建築のすごいなと思うところは、「平凡なもので非凡なものを残す」という彼の言葉通り、後世の人々がこれから先も残したいと思える建物をであるということです。

佐藤忠良展はどこへ行った?

■佐藤忠良展

宮城県美術館は、佐藤忠良記念館を備えているため、ほかでは見たことのない作品も見ることができました。特別展の方の作品を鑑賞して思ったのは、作品への光の当て方の違いです。群馬県立美術館では、明るい部屋に銅像が置いてあるスタイルで、佐藤忠良記念館もそのスタイルでした。

しかし、特別展では、展示室が少し暗くなっていて、スポットライトで各作品を照らしていたのが印象的でした。

銅像は、360度どの角度からでも見られるようになってますが、スポットライトで、ある一点からの光を強めることで、それを展示した人の視点(解釈)が提示されているように感じました。(私は、専門家ではありませんので、あくまで一個人の意見としてお聞きください。)

展示した担当者の視点の追体験というか。

特別展はさまざまな制約のある中でベストを尽くしているので、その裏側に思いを巡らせるのも楽しいなー。

私のような、美術の知識ゼロの人でも、いろいろと見ているうちに、たとえ薄っぺらでも、自分なりの意見が出てきたことに驚いています。