案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

大人の修学旅行2日目【佐川美術館】の美しさに浄化される


大人の修学旅行2日目 in 滋賀県 ~身の汚れを浄化する美術館~


■滋賀県に初上陸

初めて滋賀県を訪れました。きっと佐川美術館がなかったら、一生訪れなかったかもしれません。京都の宿から電車で向かったのですが、聞いたことのない駅名が続き、外国に来たような気分。

無人駅や小さな駅が続くと、なんとなく心細い気持ちになります。

心細いといえば、学生の頃合唱の指導で、初めて東北の岩手県宮古市を訪れた時は、怖くてお手洗い休憩でバスから降りられませんでした。その日は、雪の降る日の真夜中で、ここで置いていかれたら…そんなことはないと思いますが、ないとも言いきれず…。

知らない土地にやってくるのは新鮮な反面、ドキドキします。


■佐川美術館(1998年(平成10年)、佐川急便創立40周年を記念して開館)を訪れたのは、彫刻家・佐藤忠良(さとう ちゅうりょう、1912年7月4日 - 2011年3月30日)の彫刻を見るためです。

佐藤忠良の美術館は、宮城県に佐藤忠良記念館がありますが、大阪の天空美術館にも行きたかったので、近くにある佐川美術館を訪れることにしました。

※佐藤忠良記念館は、令和4年3月16日に福島県沖で発生した地震による被害からの復旧工事に伴い、令和4年度6月24日(金曜日)まで休館。

この美術館は、建物がとても素敵だということで、楽しみにしていたのですが、想像以上でした。美しいを通り越して心洗われる空間が広がっていました。


■佐川美術館は、琵琶湖の近くにありました。



水庭に浮かぶ佐川美術館は、近代的な造りでありながら、景観に溶け込んだ洗練された姿で、一目で心奪われました。


無彩色ですが、不思議と寂しい感じはしなくて、シンプルな美しさを感じます。


建物に溶け込むように、各所に彫刻が展示されています。
近年では、日本でもさまざまな場所で野外彫刻を見ることができますが、この美術館ほど建物と彫刻が調和した場所はあるだろうか。美術館だからと言われればそうなのですが、それでも感激です。彫刻がいきいきとして見えます。…美しい。




敷地に沿うように植えてある緑とも調和して何とも言えず素敵です。




建物の中に入るまでの道のりが美しすぎて、館内に入る前からすでに楽しい。

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■佐藤忠良が、著書『若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」』 (中公文庫) の対談の中で、”これ見よがしな見せ場がない建物には、品格がある”ということを言っていましたが、佐川美術館もそうなんじゃないかなと思いました。


■佐川美術館は、事前予約制で朝9時30分の入場に申し込んだのですが、すでにたくさんの人が訪れていました。


エントランスには、佐藤忠良の彫刻が展示されています。



泳いでいるのかなと思ったのですが、題名は<翔韻>( 1997年@仙台空港)。空に浮かんでおりますが、このような飛翔するポーズをどうやって構想したのか気になります。ポーズをとってもらうのも難しそう。


■この日は、「バンクシー&ストリートアーティスト展 ~時代に抗う表現者の声よ響け」も開催されていたので、まずはそちらへ。


■そして、いよいよお目当て「佐藤忠良」の常設展に入ります。


ここでは、銅像のほかに、数は少ないですが、スケッチやエスキース(縮小サイズの作品)の展示もありました。

写真でしか見たことのない、佐藤忠良の彫刻の数々を、いろいろな角度から見ることができて、よく見ると頭にスカーフをかぶっていたんだなとか、ズボンの縫い目の位置とか、ポケットが付いているとかいろいろな発見があって、興味深かったです。

佐藤忠良の弟子、笹戸千津子さんの二人展を訪れた時も思いましたが、彫刻だと分かっているのに本当にその人物がそこで息をしているようで、近くにいるとドキドキするのはなぜだろう。

また、着衣の彫刻は、意外とハイカラなものを身に着けていることにも気づきました。


佐藤忠良や笹戸千津子さん(お会いしたことがあるのでなんとなく敬称をつけてしまう)の作品は、デパートや劇場、コンサートホールなどの建物の内外、さまざまなところに展示されていますし、その存在にはうすうす気づいているのですが、それらの作品をしっかり見ることはあまりなかったなーと思います。


笹戸千津子さんの作品展については、こちらの記事をご覧ください↓

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なぜだろう。

あるなーとは思うのですが、しっかり見るかと言われたら、私は見なかったですね。少なくともここ数年前までは。私は、音楽大学でクラシック音楽を学んできたので、音楽に関連することについては、目が留まることがありますが、美術、特に現代美術は受け取ることが難しいと感じます。


そんな、素養のないままに過ごしてきた私ですが、建築物や着物は好きで、卒業後に思い立って学芸員の資格を取得するために、西洋美術史の授業を受けたことで、美術にも興味を持つようになりました。

■樂吉左衞門館

館内を歩くだけで、静かで落ち着いた気持ちになり、なんてすがすがしい場所なんだろう、と思っていたら、こんな場所を見つけました。



なんだ、この緑に輝く美しい場所は!!一瞬CGか!?と思ったら庭でした。

見ているだけで緑のエネルギーを感じる幻想的な景色。佐川美術館には本館の他に、2007年に竣工した「樂吉左衞門館」があります(知らなかった)。ここはその入り口で、下に降りると樂吉左衞門館につながっているのです。早速、階段を下りていくと…。


休憩スペース。無垢の木のベンチが置かれ部屋は薄暗く、幻想的で厳かな雰囲気。そして、正面には、


光が水面を通して、ガラス越しに射しこんでいます。

■樂吉左衞門館は、展示室にたくさんの作品を並べるスタイルの展示ではなく、部屋そのものが幻想的な空間=作品のようで、その中に作品が1つまたは数個置いてあるスタイル。作品と展示スペースが一つのコンセプトを共有するように作られている印象を受けました。

光の揺らめく静かで幻想的な空間。こんな場所があったなんて。この空間に一人でいると、だんだんと雑念が消え、自分が浄化されて透明になっていくような。


・・・はっ、あやうく本体まで消えかけました。


■比叡とろ湯葉そば

佐川美術館には「ミュージアムカフェSAM」があり、そこでは、水面を眺めながらお食事をいただけます。

 


建物を包む幻想的な水庭。

■私は「比叡とろ湯葉そば」を注文。


木のスプーンが付いていて、つゆを直接どんぶりにかけて食べるスタイル。

そばの上に乗っている白いのは、とろろかと思ったら湯葉でした。私にとって湯葉は高級品で、日常的に食べるものではないですし、湯葉=「ひきあげ湯葉」を想像していたので、想像と違うこのどんぶりの見た目にはとても驚きました。

しかし、食べてみたら、なんとも上品でおいしい。そばとつまみ湯葉(生湯葉を形にならないほど薄くつまみ上げた湯葉)のコラボレーションは、関東ではほとんど見たことがない(意識していないだけ?)ので、斬新な味に感じました。湯葉は濃厚で、お蕎麦とよく合います。

その後、生湯葉に目覚めることになる。

■バスの時間が来たので、帰ります。

今回は、佐藤忠良の作品を見に来たのですが、すっかり佐川美術館のとりこになってしまいました。滋賀県は私にとって簡単に訪れることのできる場所ではありませんが、また機会があったらぜひ、訪れたいです。



■次回は、大人の修学旅行3日目 京都を訪れます

 

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