案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

大人の修学旅行1日目【絹谷幸二 天空美術館】で「不二法門」の扉をたたく

大人の修学旅行1日目 in 大阪 ~相反するものを共に認め、同時に見る!?~



天然の光が降り注ぐ室内。


歯並びの良い龍・色とりどりの光を放つ太陽・高くそびえる赤い富士・金色の雲。
絵画から飛び出した、龍や太陽、富士が立体になって現れます。
 


抱き合う羽のある二人。

ここは、いったい…。


■大阪にやってきました。大阪に来るのは何年ぶりだろう。

大阪駅ってこんなに大きかったんですね!東京にあるいくつかの駅は、乗車率は世界でもトップクラスですが、大阪駅の方が建物のスケールが大きい気がする。

近代都市にやってきたようだ。

今日から3日間大人の修学旅行をします。(一人で。)
大阪には何をしに来たのかというと、絹谷幸二の「天空美術館」を訪れるためです。

早速、美術館を目指して、ずんずん歩きます。

梅田スカイビル

「絹谷幸二 天空美術館」は、大阪湾に臨む街を一望出来る超高層ビル 梅田スカイビルの27階にあります。カラフルな標識を目印に進むと、斬新なビルが…!!

梅田スカイビルは、地上40階建て二棟連結のビル。1993年にできた建物とは思えません。梅田スカイビルの形には、壮大なコンセプトがあるので、気になる方は検索してみてください。

エントランスに、美術館のポスターが。

 

こっ…これだ。ようやくたどり着いた。ずっと訪れたかった、その思いが現実に。

ビルのオフィスに勤務していると思わしき人々と一緒にエレベーターに乗り込みます。高層ビルのオフィスで働くってどんな感じなんだろう?私にとっては未知の世界です。彼らの目には、ホールで案内をする私の姿はどう映るのだろうか?

そんなことを考えつつ、エレベーターは27Fへ。

美術館って、もっと低い位置にあるイメージでしたが、「天空美術館」の名の通り、空高き所にありました。

 

(人物が映っているのでぼかしてあります。)

ご覧ください(見えずらいですが…)

受付には、絹谷の絵をまとったかのような鮮やかな赤に青の差し色が入った制服を着た受付スタッフ、その後ろには、プロジェクターで映された、ダイナミックで色鮮やかな太陽が後光のようにさしております。受付そのものが、エネルギーに満ちた一つの絵画のよう。

(↑ 受付の背景)

クラシックのコンサートホールは、落ち着いた色合いが多いですが、これからは天空美術館を見習い、ダイナミックかつ斬新な配色で来るものを圧倒しようぜ。


平日に訪れたため、館内はとてもすいていました。
ここからは、絹谷幸二がこだわった美術館の全貌に迫ります。


絹谷幸二(きぬたに こうじ、1943年~)は、画家で日本におけるアフレスコ画の第一人者です。アフレスコ画とは、壁画の古典技法で、壁に塗った漆喰が乾ききらないうちに顔料を定着させることで描く技法です。乾くまでの時間は、約24時間。絹谷は、この技法をイタリアで深め、彼独自の独創的な表現を確立させました。


絹谷の描く絵画は、洋画でありながら日本の神々が登場するだけでなく、登場人物が言葉を発します。そして、額縁にとどまらず絵は立体となって展示され、3D シアターでは我々が絵の中へ飛び込みます。


絵画ですと後ろ側は見えませんが、立体ならではの後ろ姿が面白い。

↑ 入館した際に受付で渡される、3Dシアターで使用するゴーグル。
3Dシアターは、グラフィックなのに幻想的で、とても気に入って2回観ました。私より前の回に鑑賞していた小学生の子供たちも大いに楽しんでいた様子。ずっと、わいわいしていました。

 


こちらは、絹谷の大阪のアトリエを再現したお部屋です。ここでは、VRゴーグルで360度のバーチャル リアリティ映像を体験できます。映像では、絹谷氏本人が絵に対する考え方や美術館の見どころを案内してくれます。

エネルギッシュで力強く、親しみのある語り口の絹谷氏。まるで、私のためだけに語ってくださっているような気がして、おそれ多い気持ちになります。

絹谷氏の作品は鮮やかでエネルギーにあふれた絵がたくさんありますが、どんな作品より画家本人からのエネルギーを強く感じました。

「不二法門」という言葉を発する龍


絹谷氏を貫く「あらゆる相反するものは、別々ではなくひとつのものの部分である」という「不二法門(ふにほうもん)」の教え。絹谷氏曰く「ある一部分だけを見るのではなく、あらゆる相反するものを双眼で見なければならない」のだと。

また「絵画はじっと見ることも必要ですし、動いているものを感じることも必要」と絹谷氏。その二つの相反するものをこの「絹谷幸二 天空美術館」では、見ることができるのです。

と言われても、こんな考え方があるなんて、すごすぎて理解が追いつきません。


しかし、彼のさまざまな絵を生で見ることができ、満たされた気持ちになりました。


■なぜ天空美術館に行こうと思ったのか?

色彩豊かでダイナミックで不思議な絵は、東京芸術劇場のコンサートホール前の天井の半球にも描かれています。そこに描かれた女性は涙を流しながら、激しく言葉を発しています。



楽しいコンサートを数々開催するコンサートホールの前で、なぜ彼女は泣いているのか?私は疑問に思っていました。

しかし、よく見ると、ひときわ目を引く抜けるように蒼い空には、彼女を悲しませるものが数々描かれているのです。見れば見るほど考えさせられる作品にとても惹かれました。

調べてみると、この絵を描いた画家・絹谷幸二の美術館が大阪にあると知り、行きたいと思っていたのですが、コロナ禍ということもあり、なかなか実現しませんでした。しかし、ようやくたどり着くことができました!


 

見晴らしの良いカフェでは簡単な食事ができます。

壁には、顔料をイメージした16色の瓶と色鮮やかな絹谷幸二氏の版画が飾られています。公式HPによると、このカフェは、天空美術館のイメージカラーである「赤」「青」「黄」を基調とした内装になっており、椅子やクッションはイタリア製なのだとか。

私の撮影した写真だと、この美しさがあまり伝わらないので、ぜひ実際に訪れてほしい。



外の景色も写せばよかった。
そして、もう一つ素敵だと思ったのが、この机。トレーをよけると。


漆塗り風のデザインになっている。つまり、この空間は「和×イタリア」のデザインになっているのです。粋だ。


ミュージアムショップには、色彩豊かなさまざまなグッズがありました。

中でも嬉しかったのは、書籍『絹谷幸二 自伝』を買うことができたこと。どこの書店を探してもなくてあきらめていたのですが、こんなところにあったとは!読んだらブログに感想を載せます。


VRゴーグルのダイジェスト版はこちらから(携帯で見ると360度見えます) ↓


www.youtube.com

■次回は、大人の修学旅行2日目・滋賀県にある佐川美術館を訪れます。

 

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