■視覚障がい者のサポート講座(全6回)
内容:①視覚障がい者の話を聞く
②音声ガイドの実例紹介・機材の説明
③事前解説をつくる
④本編ガイドを考える
⑤誘導の練習
⑥劇場実習 @俳優座劇場(Pカンパニー「はだしのゲン」を視覚障がい者と一緒に音声ガイド付きで鑑賞する)
■⑥劇場実習~音声解説はお芝居をみんなが楽しめるツールだと思う~
本日は、いよいよ最後の講座、劇場実習です。開場前に、本日の行程についての説明を受けた後、劇場のエントランスや客席、お手洗いを確認。
青年座は、趣のある、オシャレな造りです。しかし、階段が多い。エントランスの階段は波打った緩やかなカーブで、客席の入口も階段を上ったところにあります。
演劇を専門に行う小劇場ならではのこじんまりとしていて、レトロな感じがなんとも言えず素敵で、劇場探検隊の私としては魅力的を感じます。
しかし、この時ばかりは視覚障がいの方を案内するというプレッシャーから、建物のバロックを思わせるデザインが「トラップ」に見えました。
普段からバリアフリーは意識していますが、より一層意識した瞬間でした。
◼️お迎え
まず、駅の改札までお迎えに行きます。
これは、劇場に常駐している案内係にはない業務(あくまで私の所属する会社の場合)なので、新鮮です。私は、こんなサービスがあることをこの講座で初めて知りました。何人たりとも劇場へは自力でたどり着くものだと考えていたからです。
早速お約束した場所(駅の改札)へ迎えに行きます。実は駅の改札から地上までもかなり長い階段があり、人通りも多く、迷路のようです。
お迎えに伺ったHさん(女性)は、ヘルパーの方と一緒にいらっしゃいました。改札からは、実習のため私が案内をさせていただきます。
案内をしながら、ヘルパーの方に教えていただいたのですが、階段とエスカレーターがあった時は、どちらが良いか聞くのだそうです。
私は、エスカレーターの方が良いだろうと思っていたので、意外でした。
■劇場へ
劇場に入ると、検温と消毒、その後エントランスの階段を降りたところで、チケットを受け取り、お手洗いへ。
お手洗いもとても狭いです。通路は、人がすれ違えるか否か。
お手洗いでは、
・トイレットペーパーの位置
・流すボタンやレバーの位置
・便器の蓋が開いているかどうか
をお伝えします。
そして、何とか階段を上がり、客席へ。
■事前解説
客席には、ビニールに入った、本日のプログラムとチラシの束が置いてありました。
「墨字で書かれたチラシの束がありますが、持ち帰りますか?」と尋ねます。
そして、イヤホン(ラジオ)をお渡し、機械の説明。
事前解説は、開場時間中に2回、2人の受講生が1人ずつ自分の作ったものを読みます。
■鑑賞
音声解説は、主に視覚にハンディキャップのある方が舞台上の様子を把握しながらお芝居を楽しめるように提供されているものです。
しかし、今回の解説を聞いて、音声解説が必要なのは、ハンディキャップのある方だけではないと思いました。
例えば、公演開始前の事前解説。
パンフレットを隅から隅まで読めば、全体を把握することができるかもしれません。しかし、人の声で聴くと違った気付きがありました。
また、どのような内容でどういうところが見どころなのか、パンフレットにないことを事前に知ったことでそのシーンになった時、より多くのものが見えたり、
本編中も何気ない動作の意味や背景などの説明があるとそういうことだったんだ、とより深く理解できたりしました。
もう知っているはずの映画や曲でも、何度も見ると新しい発見があるように、1回で全てを知れることの方が少ないと思います。
歌舞伎などを鑑賞するときのイヤホンガイドのように、なんらかのガイドがあるのは視覚に障害が無くても楽しいと私は感じました。
◼️解説技術
日々変化する生のお芝居に合わせて解説を入れる高度な技術とお芝居をしっかり把握した上で選ばれた洗練された言葉選びによるものだと思いました。
事前に準備しておいても、ゲネプロや当日の変更もありますし、本番中もいつもとは違うこともあったりするので、それに合わせて解説を変えるのは職人技です。
私もコンサートで影アナウンスを担当することがありますが、初期の頃は失敗出来ないと思い頭が真っ白になっていました。
1公演ずっとなんて…。すごい…。
■座談会
鑑賞が終わった後も続きがあり、場所を移動してたった今見終わった「はだしのゲン」について感想などを話し合いました。
同じお芝居を見ても人によって感じたことは違いますし、気づいたことも違うはずです。そういうことについて共有することで、より鑑賞を深めることがねらいです。この会は、かなり盛り上がるようですが、今回は舞台芸術鑑賞講座という講座の一環だったこともあり、鑑賞したものについての感想というより、ガイドや解説についての受講生の反省会のようになってしまったことがもったいなかったなと思いました。
■まとめ
私は、戦争を題材としたお芝居が苦手です。なので、今回音声解説を作るために事前に録画したものを見せていただき、物語の背景や演劇の舞台についても調べたのですが、とても重たい気持ちでした。
特に、被爆した人々が町をさ迷うよう様子が工夫されていて印象的であった反面、「あ~つ~い~」という人々の不気味な叫びが耳に残り…。
しかし、実際に舞台を見ることができて良かったと思いました。
そして、このお芝居をより楽しむために音声解説が担っていた役割は大きかったです。
自分が今後音声解説にどのようにかかわっていけるか分かりませんが、今回の講座での体験は私に新しい気づきを与えてくれました。
私が、音声解説デビューする日は来るのか!?
完