「誰でもできる」の先にある、私の誇り。
劇場案内係という“ブランド”の作り方
誰でもできる仕事ではなく、
誰に任せるかで価値が変わる仕事。
「代わりはいくらでもいる」という誤解
劇場の案内係。世間一般では「地位も給料も低い、誰でもできる仕事」だと思われがちです。
事実、ボランティアや身内だけで運営されている現場も少なくありません。
「なんとなく公演が回ればいい」と考える人にとって、スタッフの質なんて二の次。質の高いプロがそこにいても、その違いにすら気づかないかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか?
確かに、表面だけを見ればそう見えるかもしれません。
しかし、本当に質の高い現場ほど知っています。
空間の印象、観客の安心感、時間の流れ――
それらは、目に見えないプロフェッショナルの存在によって支えられているということを。
私は、その見えない価値を提供するために現場に立っています。
今の時代は、効率と手軽さが優先されます。
“それらしく”整っていれば十分とされることも多いでしょう。
けれど私が選ぶのは、ベニア板ではなく、一枚板の仕事です。
育児、介護、接客、教育。
「誰でもできる」と言われる仕事ほど、実際には高度な観察力と判断力を必要とします。
本当のプロとは、自分ができることを見せる人ではなく、
相手が自然に安心できる状態を、見えないところで設計する人。
何も起こらないこと。
滞りなく時間が流れること。
その当たり前を成立させるために、準備と経験は積み重ねられています。
以前、現場にお気に入りのスーツを着ていたとき、こう言われたことがあります。
「そんなにいい服、汚れるのに」
けれど私にとって、装いは単なる作業着ではありません。
私たちが迎えるのは、大切な時間を選び取って足を運ぶお客様です。
舞台に立つのは、人生をかけて表現するアーティストです。
劇場は、日常から切り離された特別な空間です。
その場所に立つ者が、自らの佇まいを軽く扱うことはできない。
装いは敬意であり、信頼の入り口です。
言葉より先に、「あなたを大切に思っています」と伝える手段だと考えています。
私は、案内係という仕事を単なる補助業務だとは思っていません。
空間の質を整え、
観客の体験を支え、
公演全体の価値を底上げする。
それが、私の役割です。
だからこそ、「誰でもいい」とは思われたくない。
そして、私自身も「誰でもいい仕事」はしません。
価格ではなく、信頼で選ばれること。
人数ではなく、品質で評価されること。
それが、私の仕事の基準です。
私はこれからも、
「案内係」という肩書きを、ひとつのブランドとして磨き続けます。
誰でもできる仕事ではなく、
あなたに任せたい仕事へ。
その名前があるだけで、空間の質が上がる。
そう言われる存在であり続けるために。