案内係やーぼのブログ

コンサートホールで案内係をしている著者が、出演者・聴衆・スタッフの思いが響き合い乱反射する、劇場の魅力を語ります。

エルケル劇場「椿姫」アルフレードの妹が現る!?

【ハンガリー滞在記2019】#7 

2019年4月12日 後編

ブダペストでは、ブダペスト・スプリング・フェスティバル(Budapesti Tavaszi Fesztivál 2019年4月5日~4月22日)が開催されていました。

本当は、ハンガリー国立オペラ劇場に行くことをずっと楽しみにしていたが、改装工事のため公演はお休み…。はあ、残念。(2019年4月現在)

しかし、そんなことは問題ではない!観るべきものは、山のようにあるのだ!

ということで、この日は、お昼にキラーイ温泉(Király fürdő)に行った後、夕方からはエルケル劇場(Erkel Színház)へ、オペラ「椿姫 La traviata」を観に行く。

f:id:ya-bo:20190414190133j:plain

エルケル劇場

椿姫は、華やかさともの悲しさが入り混じった音楽が好き。 ネットでは売り切れになっていたが、あきらめきれず直接劇場の窓口へ。意外にも見やすい中央のブロックのチケットをゲット。うれしい!




イタリア語での上演なので、字幕は英語とハンガリー語が同時に表示される。

演出がとても斬新で、キャストよりもバレエやアンサンブルから目が離せなかった。特に驚いたのは、アルフレードの妹が登場したこと。

 

椿姫のあらすじをとてもざっくり説明すると、舞台は19世紀のパリ。高級娼婦のヴィオレッタは、パーティーの日々に明け暮れ、病気にも侵されています。貴族の青年アルフレードは、そんな、ヴィオレッタを娼婦としてではなく、一人の女性として愛し、華やかな暮らしを捨てて、自分と暮らすように提案します。

ビオレッタは真の愛に気づき、今までの生活を捨てて、アルフレードと一緒に暮らし始めます。それは、彼らにとってつかの間の幸せな日々でした。


ある日、アルフレードの留守の間にアルフレードの父親ジェルモンが訪れ、兄とヴィオレッタの関係が妹の結婚の障害となってしまうので、アルフレードと別れるように言うのです。

病気で自分がもう長く生きられないと分かっているヴィオレッタは、父親の要求を拒みます。

しかし、ジェルモンは「天使のように純粋な娘」を歌い、娘の幸せのために犠牲になってほしいと懇願するのです。ついにヴィオレッタは「美しく清らかなお嬢様にお伝えしてください」と歌い、アルフレードの家族のために、身を引くことを決意。理由を告げないまま、アルフレードのもとから離れ、元の生活に戻っていくのです。

事実を知らないアルフレードは、裏切られたと思い、ヴィオレッタをののしります。

しかし、最後は誤解が解けて、二人は交際を許されます。しかし、その時すでにヴィオレッタはかろうじて生きている状態で、アルフレードと父親のジェルモンがヴィオレッタの元へ駆けつけてすぐ、ヴィオレッタは肺炎のため亡くなります。(詳しい内容は、いろいろなところで調べることができるので、そちらを参照してください。)


愛する人の妹や家族を想い、自らを犠牲にしたヴィオレッタですが、その原因となったアルフレードの妹は、台本には登場しないので、どんな人物か想像したこともありませんでした。ジェルモンの言うとうり、天使のように純粋で、美しく清らかな人。。。


その妹が登場!!

あれ?

天使のように

天使とは?


純粋で、

純粋さは出ていました。純粋に生きている感じがしました。

だけど、

美しく清らかな娘、、、

美しく清らかとは?


今回登場した妹は、かなりぽっちゃりとしていて、服装も幼く、無表情。なぜか手に棒のついた綿あめを持っていた。うーん、私の想像とだいぶ違う。

こんな解釈もあったのか!ジェルモンの言うことを鵜呑みにしてた…。

ちなみに妹役の人は、セリフも歌もなくソファーに座っているだけなのにメインキャストより存在感があって、ただ者ではない雰囲気。私は、彼女の演技がとても気に入りましたし、実力を感じました。

演出家には、妹役を出すことによって、二つのねらいがあると思いました。

まず、より椿姫の悲劇性を高める効果。美しい妹が…と美しいデュエットを歌いますが、割とそうでもなく、そうとも知らず、そうでもない人のために、自分を犠牲にしたヴィオレッタの悲劇性と皮肉。(役者の悪口ではありません、彼女だからこそそのような演技ができたのであって、ほかのキャストを選んだら、今回のような効果は狙えなかったと思います。)

そして、どのような容姿の娘であっても、父親にとって娘はかわいいというメッセージ。


さらに、仮面舞踏会の場面で白雪姫!?の衣装をきたダンサーが出てきたが、物語の重要なシーンなのに、白雪姫しか見ていなかった。

恐るべし、サブキャストたち。本編のキャスト達が何をしていたのかは、忘却の彼方へ。なのに、すごく心にしみる演出でした。

やっぱり、アルフレードの妹役の人のおかげだね。

私もこういう演技ができたらいいな。


オペラ鑑賞に満足した、私。明日は、新しい宿に移動します。次は、英語を話さなければならないプレッシャーを感じつつこの日を終えました。

そして、私は移動先のペンションで、次に大きな問題に直面するのです。

つづく